こんにちは。有限会社榊原工機です。
今日は、私たちが手がけている高級ゴルフパター「SAKAKI PUTTER」について、お話ししたいと思います。特に、真鍮モデルとステンレスモデルで打感がどう変わるのか、製造現場の視点から詳しくご説明します。
パターの打感を決めるもの:削り出しへのこだわり
パッティングは、ゴルフのスコアを左右する最も繊細な技術です。1打1打が勝負を分ける世界で、パターの「打感」は単なる好みの問題ではありません。ボールがフェースに当たった瞬間の感触は、距離感や方向性を調整するための大切な情報源なのです。
私たち榊原工機は、愛知県春日井市で精密切削加工を専門に行っている町工場です。手のひらサイズの小物部品から複雑な形状の試作品まで、お客様の「困った」を解決することを得意としています。
その技術力を結集して生み出したのが、SAKAKI PUTTERです。
5軸加工機が生み出す精密さ
SAKAKI PUTTERは、5軸加工機を使って一つひとつ丁寧に削り出しています。5軸加工機とは、複雑な三次元形状を一度の段取りで複数の方向から加工できる高度な設備です。
パターのフェースやソール、キャビティといった複雑な曲面を、ミクロン単位の精度で削り出すことができます。設計者が意図した重心位置、ロフト角、ライ角を完璧に実現するには、この精度が欠かせません。
鋳造や鍛造では難しい内部構造の均一性と表面の平滑性を、削り出しなら極限まで高められます。この均質性こそが、フェースのどこでヒットしても一貫した振動特性を生み出し、クリアな打感の基礎となるのです。
多能工エンジニアの技
設備だけでは良いパターは作れません。私たちの工場には、「考えて動く多能工のエンジニア」がいます。
彼らは日々、NC旋盤やマシニングセンタ、ワイヤーカット加工機を使いこなしながら、お客様の難しい依頼に応えています。どのような手順で削るか、どう治具で固定するか、いかに精度を保つか。こうした工程設計には、長年の経験とクリエイティブな発想が必要です。
SAKAKI PUTTERの開発でも、この技術力が存分に発揮されました。単なる金属の塊ではなく、ゴルファーの感性に響く精密な道具として仕上げるために、何度も試行錯誤を重ねてきました。
真鍮モデルの特徴:重厚でマイルドな打感
SAKAKI PUTTERには、真鍮とステンレスという2つの材質があります。まずは真鍮モデルからご説明しましょう。
真鍮は銅と亜鉛の合金で、古くから楽器や美術品、精密機械の部品に使われてきました。この材質を選んだのには、明確な理由があります。
真鍮の物理的特性
真鍮の最大の特徴は、その高い密度です。ステンレスと比べて比重が重いため、コンパクトなヘッドでもしっかりとした質量を確保できます。これにより慣性モーメントが高まり、芯を外してもブレにくいパターに仕上がります。
また、真鍮はステンレスより硬度が低く、展延性に優れています。振動減衰性が高いという特性も持っています。
私たちのような加工屋からすると、真鍮は比較的加工しやすい材質です。ただし、「加工しやすい」からといって手を抜くことはありません。削り出しの精度を徹底的に追求することで、柔らかさの中にも芯のあるフィーリングを引き出すことができるのです。
ゴルファーが感じる打感
真鍮モデルでボールを打つと、重厚でソリッドな感触が手に伝わります。ボールがフェースに食いつくような、「ソフト」で「粘る」独特のフィーリングです。
特に振動減衰性の高さは、打音を低く抑え、手に響く振動を優しくマイルドにします。繊細な感覚を大切にするゴルファーから、「ボールがフェースに乗る感覚がわかる」という声をいただいています。
こんなゴルファーにおすすめです。
- ボールの接触時間を長く感じたい方
- フェースにボールが「乗る」感覚を重視する方
- 低速から中速のグリーンでプレーする機会が多い方
重厚なヘッドがスムーズなストロークを助けるので、しっかりとした転がりを出しやすいのも特徴です。
ステンレスモデルの特徴:シャープで明確なフィードバック
もう一つの選択肢が、ステンレスモデルです。ステンレスは耐食性と強度に優れ、ゴルフ用品をはじめとする工業製品で最も一般的に使われる金属材料です。
ステンレスの物理的特性
ステンレスは真鍮に比べて硬度が高く、弾性率も高い、つまり変形しにくい特性を持っています。振動減衰性は真鍮ほど高くありませんが、パター製造に必要な強度と重量を両立できる優れた素材です。
実は、ステンレスは加工が難しい難削材として知られています。刃物が摩耗しやすく、加工時の発熱も大きいため、適切な切削条件を見つけるのに技術とノウハウが必要です。
私たちは日頃からステンレス加工を得意としており、その経験を活かしてSAKAKI PUTTERでもステンレスの持つ高い強度を最大限に引き出しています。5軸加工機を駆使して設計通りの精密な形状とバランスを実現できるのは、長年の加工実績があるからこそです。
ゴルファーが感じる打感
ステンレスモデルでボールを打つと、シャープで明確なフィードバックが手に伝わります。ボールがフェースから「弾かれる」ような感覚です。
真鍮と違って振動減衰性が低いため、芯を外したときの振動もハッキリとゴルファーに伝わります。これは欠点ではなく、むしろヘッドの動きやボールの挙動をダイレクトに感じたいゴルファーにとっては大きなメリットです。
こんなゴルファーにおすすめです。
- ヘッドの動きを正確に感じ取りたい方
- コントロール性を重視する方
- 高速グリーンでプレーする機会が多い方
応答性が高いため、繊細なタッチが要求される高速グリーンでも距離感を合わせやすいのが特徴です。
2つの材質を提供する理由:ゴルファーの多様なニーズに応える
なぜ私たちは、真鍮とステンレスの両方を用意しているのでしょうか。
それは、ゴルファーそれぞれに好みや求める感覚が違うからです。どちらが優れているということではなく、どちらが自分に合っているかという問題なのです。
材料特性を活かす技術力
私たち榊原工機は、材質を問わず様々な加工に対応できる技術を持っています。NC旋盤、マシニングセンタ、ワイヤーカット加工など、多様な設備を使い分けて、それぞれの材料が持つ特性を最大限に引き出します。
硬いステンレスから柔らかい真鍮まで、材質ごとに最適な加工条件を見極めて、設計者が意図した形状とバランスを実現する。これが私たちの強みです。
例えば、真鍮は柔らかいので切削速度を上げられますが、刃物の逃げ角や送り速度を適切に設定しないと、仕上げ面に問題が出ます。一方、ステンレスは硬いので切削速度を抑え、クーラントで十分に冷却しながら加工する必要があります。
こうした細かなノウハウの積み重ねが、最終的な打感の質を左右するのです。
お客様との信頼関係
私たちの工場は、「木のぬくもりと緑にあふれたあたたかい町工場」を目指しています。オープンで相談しやすい環境を大切にしており、お客様との信頼関係を何より重視しています。
パター選びも同じです。真鍮とステンレスの選択肢を提供することで、ゴルファーの皆さんが自分のストロークや求めるフィーリングに合わせて最適な素材を選べるようにしたい。私たちはそう考えています。
実際、SAKAKI PUTTERをお使いいただいているゴルファーの方々から、「自分に合った打感が見つかった」「パッティングが楽しくなった」というお声をいただくことが、私たちの何よりの励みになっています。
削り出し精度が生む究極の打感
真鍮モデルとステンレスモデル、それぞれ異なる打感を持っていますが、共通しているのは「妥協のない削り出し精度」です。
どんなに素材の特性が良くても、加工精度が低ければその良さは発揮されません。逆に、高精度な加工があってこそ、素材の持つポテンシャルを最大限に引き出せるのです。
均質性がもたらす一貫した打感
削り出しの最大の利点は、内部構造の均一性です。鋳造のように内部に気泡が入ったり、組織が不均一になったりすることがありません。
フェースのどの部分でヒットしても振動特性が一貫している。この均質性が、ゴルファーに安心感を与え、自信を持ってストロークできる理由になります。
私たちは5軸加工機で複雑な形状を一度の段取りで仕上げることで、組み付け誤差もゼロにしています。ミクロン単位の精度管理が、最終的な打感の質を決定づけるのです。
表面仕上げへのこだわり
削り出し後の表面仕上げも重要です。フェースの平滑性は、ボールとの接触時間や摩擦係数に影響します。
私たちは長年の経験から、それぞれの材質に最適な工具選定、切削条件、仕上げ方法を熟知しています。真鍮なら美しい光沢を保ちながら適度な摩擦を生む仕上げ、ステンレスなら耐久性と応答性を両立する仕上げを実現しています。
こうした細部へのこだわりが、「ただの金属製品」ではなく、「ゴルファーの感性を刺激する道具」としてのパターを生み出すのです。
音色に例えるなら:オーケストラの楽器のように
パターの打感を比較するのは、オーケストラの楽器を比較することに似ています。
同じ楽曲を演奏しても、トランペットなどの金管楽器は重厚で深く響く音色を奏でます。一方、より硬質な金属でできた楽器は、鋭くクリアで明確な音色を響かせます。
真鍮モデルは金管楽器のように、温かみがあって余韻の長い「音」を奏でます。ステンレスモデルは打楽器のように、瞬間的で明瞭な「音」を響かせます。
どちらが良い音色かは、演奏者の好み次第です。しかし、どちらの音色も、それを生み出す職人の技術があって初めて、最高のクオリティで実現されます。
おわりに:あなたに合った一本を
SAKAKI PUTTERの真鍮モデルとステンレスモデル。それぞれが異なる打感を持ち、異なるゴルファーに最適な選択肢となります。
真鍮は重厚でマイルド、ステンレスはシャープで明確。この違いは素材の物理特性に由来しますが、その違いを最大限に引き出しているのは、私たち榊原工機の5軸加工技術と、長年培ってきた精密切削のノウハウです。
私たちは「機械部品加工の駆け込み寺」として、日々さまざまな難題に取り組んでいます。その中で磨かれた技術とクリエイティブな発想が、SAKAKI PUTTERという高級パターに結実しました。
パッティングは、ゴルフの中で最も個性が出る部分です。だからこそ、自分に合った道具を選ぶことが大切です。真鍮かステンレスか、重厚な打感かシャープな打感か。
ぜひ一度、SAKAKI PUTTERを手に取って、その違いを感じてみてください。私たちが丹精込めて削り出したパターが、あなたのゴルフライフをより豊かにできれば、これ以上の喜びはありません。
愛知県春日井市の町工場から、こだわりの一本をお届けします。